以前のエントリーに対して、CCC様より以下のような質問が来ていたので、私なりに考えてみたいと思う。

[ケース]自分の所有地の有効活用に悩んでいた私に対して、「更地として遊休させておかないで、?事務所兼倉庫を建ててテナントに貸して家賃をとり、税金をそのなかから納めていくとか、?土地を誰かに借地させて、その人に事務所兼倉庫を建てさせて、地代を借地権者から授受しそのなかから税金も納めていくとかしたらどうか。テナントも私(企画者)が探してきますし。借地させるのなら、どのような事務所がこの立地には適考えますし、テナントの質、信用度のチェックも行いますし、借地権者にもそのような建物を建てさせて、借地権者や地主さんの利益が極大になるように指導いたしますし。」などと言われ、実際に、この企画者に企画してもらった場合の、企画者に対する報酬の算定方法


まず、企画料・コンサル料などの実体化されない物も、パソコンの購入や車の購入など対価に対して実体として残る物も、突き詰めて考えればお金を払う側にとっては、その対価に見合った価値があるかどうかということだけである。
以前のエントリーに書いた仲介業者は、要は、対価に対する価値を私に対してきちんと提示できなかっただけである。


よって、ビジネスの企画料的なものに対する値付けは、いかようにでもやりようがあると思う。
ただ、極端な話、オーナーの初期投資が10億ほどの物件で5億の企画料という値付けをしてもまったく話にはならないので、その辺りのバランスをどこに置くかということであろう。


さて、CCC様のご質問に対してだが、上記ケースにドンピシャ当てはまる考え方ということではなく、様々なケースでも利用できる方法論にて考えていこうと思う。



この種の企画提案においては、どのようなケースの場合でも、二つのアプローチから導き出す解が最良かと私は考える。
それは何かと言うと、一つはマクロ的な括りで捉えた値付けの検討(上流部分からの)と、ミクロ的な括りで捉えた値付けの検討(下流部分からの)により、根拠のある企画提案を行うということである。


まずマクロ的なアプローチからの値決めであるが、これは下記のように考える。

  • 実際にオーナーがかける費用、あるいは総事業投資に対して、どの程度の割合を企画料とするのが妥当か。

■賃料の1か月分
商業店舗なのか事務所なのか、遊休地の土地活用をどうするかは別として、建物を建てて第3者に貸すということであれば、予定月額賃料の1か月分を企画料なりコンサル料として大枠の値決め目論んでおく。
「家賃1か月程度か・・・」と思うことなかれ。
以前、私が開発を行っていたスポーツクラブの場合、1,500坪クラスの建物の月家賃が800万~1,000万円(立地にもよるが)となる。
つまり報酬額として800万~1,000万を目論むことが出来る。

■オーナー初期投資額あるいは総事業費の○○%
これは建築見積の中に含まれている設計料の割合や、建築会社等の見積内に含まれている諸経費の割合が参考となるであろう。
最近、私自身、設計会社がかむような店舗を作っていないので、過去の経験値でしか物を言えないのだが、総工費に対する10%~20%が設計費であったり、見積総額に対する9%~15%が諸経費であったりしたので、その事業の規模にもよるが、一から十までコンサルティングをするのなら、オーナー初期投資額あるいは総事業費の10%前後を目処に大枠を目論んでおく。


これでまず、ある程度の受け取るべき大枠を決めてしまい、次にその根拠づくりを積み上げていけばいいと思う。


それがミクロ的なアプローチによる値決めとなる。
ミクロ的なアプローチで考えられるものは下記のようなものがある。


  • 事業コンセプト構築
  • 工数
  • 立地調査
  • 事業収支計画構築
  • 資金調達計画構築
  • 人員配置計画構築(店舗コンサルの場合)
  • 建築図面作成
  • 建築業者選定
  • 官公庁対応
  • 近隣対策   等

■事業コンセプト構築
ある事業の新業態開発を行ったとき、私が所属していた組織はコンセプト作りに対して100万円を支払っていた。
ビジュアルコラージュやコンセプトマップを駆使した説得力のある内容だったのを記憶している。

■工数
その事業を企画するにあたって、何人の人間が何時間の時間を割いたかということで費用を算出する。

例えば、税込み月給が35万円の人間が一人で動いた場合の時間辺り単価を算出し、それに数 % 利益を乗せて数字作りを行う。

月給÷週休二日の場合の実働日数÷一日あたりの就業時間
=35万÷22÷8≒1,988=一人あたりの時間単価

約2,000円の時間単価に利益を30%上乗せし、一人あたりの時間単価を2,600円、一日辺りの単価を20,800円と設定する。

あるいは、建築現場の職人の日当を参考としてもよいだろう。
しばらく前であったが、だいたい職人の日当単価が30,000円~40,000円ぐらいだったので、そのままその数字を企画料・コンサル料づくりの参考数字としてもよい。

そして、事業を仕上げるのにおおよそどのくらいの期間、延べ何人の人間がかかるかをあらかじめ目論でおき、企画料・コンサル料の算出根拠のうちの一つとする。

■立地調査
調査費は何人の人間が調査に関わるかから、上で求めた一人あたり単価をかけて労働部分での金額を決め、さらにどのような調査を行うか、どのような資料を提出するかによって技術料的な金額を上乗せし算出する。
考えられる調査内容としては、交通量・周辺人口・周辺世帯数・周辺競合・周辺施設の状況等で、そこで得られたデータ等をいかに事業に根拠づけていくかのスキルが必要となるが・・・。


以前、フランチャイザーの本部で開発がらみの仕事をしていた時、某FC斡旋会社は物件調査費用として加盟希望をしている会社に対し、調査1件あたり15万円を見積計上していた。この15万円の中に物件を探してくる料金は入っていなかったと記憶している。
15万円の中身は、A4・10ページ程度の立地調査報告書であった。

■事業収支計画構築
フランチャイザー本部の職についていた時に作った収支計画は20ページほどのものであった。
内容は、初期投資計画、償却計画、損益分岐点算出、5年分の予測P/Lなど。
この内容だけでも20万円程度の値付けはできると思う。

■資金調達計画構築
自己資金での調達、リースによる資金調達、割賦による資金調達、投資家を募って資金調達等、調達方法の計画・斡旋に対するフィー。

■人員配置計画構築(店舗コンサルの場合)
商業店舗コンサルの場合、人員募集から、配置、教育までフィーの取りどころはいくらでも考えられる。

■建築図面作成
これも昔の話だが、3セクに対してスポーツクラブの提案を行った時、協力設計会社に建築図面作成(建物配置計画・平面図・立面図・断面図程度)を50万円で依頼し、100万円で売りつけた覚えがある。(笑

■建築業者選定
事業予算内で事業を行うために絶対必要な部分であり、コストコントロールという事でフィーを取る理由付けになると思う。

■官公庁対応
■近隣対策
上記二つは絶対避けて通れない部分であり、理由付けも容易。
後はいくらの値段をつけるかだけである。(笑


以上、二つのアプローチから最終的に根拠を持った数字を出すのが妥当な方法であろう。


【参考書籍】
誰も教えてくれないフランチャイズ本部の立ち上げ方―会社を大きくしたいならFC部門を持ちなさい!契約書等のモデル例を掲載!誰も教えてくれないフランチャイズ本部の立ち上げ方―会社を大きくしたいならFC部門を持ちなさい!契約書等のモデル例を掲載!

大野 勝彦
フランチャイズ本部の立ち上げ方―FCコンサルタントが初めて明かすフランチャイズ本部の立ち上げ方―FCコンサルタントが初めて明かす

大野 勝彦