フィットネスクラブ業界とヘルスフィットネスジャパン by ■ スポーツトレーナー始末記 ~養生指南・最上晴朗~ さんへトラバ。


私も以前、フィットネスクラブ業界に関わっていたことがあるので、ちょっとした考察をしてみたい。

■ スポーツトレーナー始末記 ~養生指南・最上晴朗~ さんエントリー引用
ただこの業界の最大の問題点は、全体のパイが広がっていないことだ。大手が零細企業を買収して大きくなっているだけで、業界全体の店舗数はほとんどここ数年、変わっていない。要するに「食い合っている」状態だ。各社色々な手を打っている(医療機関と提携した「メディカルフィットネス」など)が、有効策となり得る手は、今のところ見えていない。私の考えは、ここで言うとアイデアを先にばらすことになるので、またの機会に。



最上氏のアイデアは気になるところだが、それはおいておくとして、この『業界の最大の問題点』のひとつの原因が、店舗開発という側面から見た場合のビジネススキームのまずさにあげられると思う。

基本的なフィットネスクラブにおける出店のスキームは、いわゆるリースバック方式で、家主に箱を用意してもらい、その投資金額の8~10%を年間賃料とし20年程度のテナント契約を結ぶというやり方である。

プールを含めたフルラインのフィットネスクラブ(延べ床約1,500坪)を作るのに、おおよそ7億~10億の投資がかかり、さらに、出店する側の投資として3億程度(持ち込み工事含め)の投資が上積みされる。

この数字で収支を考えていくと、家主側が投資を回収し利益を上げていくのには、約7年目からとなってくる。


私が業界に入った当時はフィットネスクラブはそれまでの高級志向から一般志向への移行期であり業界自体の黎明期であった。
イメージの良さと客を呼べるアイテムとしての有用性に目をつけたデベロッパーがこぞって、プランニングの段階でフィットネスクラブを入れていたものである。
その当時、上記のような出店スキームは出来上がっていたが、20年という実績を持った施設は無かったのである。


ここに一つの落とし穴があったのである。


ここ数年、都内大型開発案件プロジェクトが複数あった。

汐留、勝鬨、六本木ヒルズ、etc.

しかし、そのどこにもフィットネスクラブはテナントとして入居していない。
これは何をあらわしているのかというと、20年も他に転用の効かないフィットネスクラブを、テナントとして抱えておく事のリスクにデベロッパーや家主側が気づいたからでは無いだろうか。


プール設備を作ると言うことは、常時250トン近い水の過重が建物にかかっているという事で、当然そのためには商業ビル上層階などに計画した場合、設計要件のスペックを上げる必要があり、コストを上げる要因となる。
また、フィットネスクラブ事業がうまくいかない場合、通常のテナントなら内装造作を撤去して新たなテナントを誘致することが可能だが、フィットネスクラブの場合、プールや風呂などの専用仕様となっているため、他への転用が全く利かなくなる。
また、自明の理であるが、フィットネスクラブとしてうまく行かなかった所に別のブランドのフィットネスクラブが入居したとしても、大幅な改善は見られないのである。
だから、事業としてうまくいっていないフィットネスクラブを抱える商業施設側は、最終的にどうなるかと言うと、家賃の値下げ等で対応せざるを得なくなるのである。


1,000坪以上の面積を占有しているのに、そこから利益を生み出すことができない構造。
しかも、利益を生み出すことができるものへの転用が効かないという汎用性の無さ。


これはロードサイド単独店舗でも同じ事が言える。

家主側は延べで1,000坪以上の建物を所有するので、当然、固定資産税も通常のロードサイド店舗(ファミレスなど)を所有するよりも上がってしまう。
そして同じように、フィットネスクラブ撤退後の事業汎用性の無い店舗・・・。
ビジネスベースで考えた場合、あまりやりたくないというのが本音であろう。


業界のパイが広がらないという一翼を担っているのはこういう部分もあると思う。
そして、それを真面目に取り組んできていないデファクトスタンダートの業界上位企業連の責任は大きい用な気がする。


これからは海外資本の入ったフィットネスクラブも参入するようだ。
最上氏も書いておられたように、現状の業界は『M&Aで規模の拡大・売上の拡大』を追求しているが、私には他に手をつけるところはいくらでもあるように思えるのだが・・・。

そこにビジネスチャンスが転がっているという事なのだろう。

時間毎料金で利用の利便性を図っているフィットネスクラブや、投資の軽い(プール無し、ドライゾーンのみ)の店舗パッケージで早い展開を狙っているフィットネスクラブなど、新興企業の今後が楽しみではある。

その中で、何か私自身関われる部分があればやぶさかでは無いが。(笑