会社の後輩が、いわゆる悪質な電話勧誘で高額な商品を買わされそうになった。

電話は、名指しでその後輩あてに直接かかってきており、「特別な情報ルートであなただけに連絡させていただいております。」「会社の総務にお名前は伺っております。」などということだったので、後輩は話を聞いてしまい、電話で契約してしまった。

後になって、総額で70万円ほどの金額がかかると言うことがわかり、電話で断ろうとしたのだが、「すでに口頭にて契約は完了しております。」「クーリングオフはできません。」などの一点張りで断ることも出来ず、また、自分の個人情報も先方へと伝えてしまっていたので会社に来られても困るので、非常に困惑していた。

結局はクーリングオフが可能な内容だったので、クーリングオフを行ってくれる行政書士にネット経由でお願いし、契約解除となった。
その費用は約3万円。
彼にとっては高い授業料だったが良い勉強になったと思う。

クーリングオフ~ウィキペディア
クーリングオフとは、通信販売を除く無店舗販売における消費者の商品購入契約について、一定期間、無条件で契約を解除できる法制度である。



さて、ここで彼に対して行われた悪質な電話勧誘だが、説得における三大テクニックである、フット・イン・ザ・ドア・テクニック、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック、ローボールテクニックを駆使したものであったようだ。

■フット・イン・ザ・ドア・テクニック
断る自由を奪うためのテクニックで、段階的に小さな(受け入れやすい)要請から始め、徐々にその要請を大きくして行き、最終的に相手が断りにくくなるように仕向ける手法。

例えば、ウィンドウショッピングをしていて、店員に勧められるとおり買う気がなかったのに商品を買ってしまったという経験が無いだろうか。
「よろしかったらご試着をしてみませんか?」「お袖を通すだけでも。」「きっとお似合いになりますよ・・・。」なんて言葉をかけられ、「試すだけならタダだし良いか」と思い結局のところ、逆に買わない方が悪いような罪悪感にかられ商品を購入してしまう。

対処法としては、小さな要請の後には必ず大きな要請がやってくると言うことを肝に銘じ、「それとこれとは別」という言葉を冷静に自分に投げかけ、頭を完全に切り替えるようにすれば、このテクニックにひっかかることは無いであろう。

■ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
相手の罪悪感を利用するテクニックで、はじめにあえて大きな(断りやすい)要求を行い、相手がそれを断った時点で小さな(本当の)要求を行うというやり方。

例えば、友人から金を貸してくれと言われ、最終的に断れなくて貸してしまったという経験はないだろうか?
「5万円貸してくれよ。・・・駄目?・・・じゃあせめて1万円だけでも貸してくれない?」なんてことを言われ、最初に断ってしまったことに対して罪悪感を感じ、仕方ないなぁと言いつつ貸してしまう。

対処法としては、不要な罪悪感を感じないようにすると言うことだけで、本当に罪悪感を感じなければいけない状況なのかを冷静に考えて対処すれば、ひっかかることは無いだろう。

■ローボールテクニック
得したように見せかけて実は・・・という心理をついたテクニックで、相手が受け止めやすいボールを投げておき、その後に本当に投げたかった球を投げるという手法。

例えば、「今週中に返すから一万円貸してくれない?」「いいよ」「あ、そうだ。電話料金の引き落としがあるから、返すのは来週の頭になっちゃうかもしれないけどいいかな?」と言われ、断れなくなってしまったことは無いであろうか?
これは「自分の決定に責任をとらなければ」という人間の心理をうまくついた手法である。

対処法としては、これまでと同じ「冷静」になることが重要である。条件が変わったら、その場を離れて考え直すようにすれば良いのである。


■参考書籍
「心理戦」で絶対に負けない本―敵を見抜く・引き込む・操るテクニック
「心理戦」で絶対に負けない本―敵を見抜く・引き込む・操るテクニック
伊東 明 内藤 誼人