水滸伝 1 曙光の章
水滸伝 1 曙光の章
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北方 謙三
集英社
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asahi.com: 司馬遼太郎賞に北方謙三さんの「水滸伝」?-?文化・芸能

北方謙三は高校から大学にかけて貪る様に読んだ。その頃読んだ、ブラディドールシリーズだったり挑戦シリーズだったりはいまだに私の中でフェイバリットな物語だったりする。

ところが、ある時からまったく読めなくなってしまった。その物語に埋没していくことができなくなってしまった。作家が変わったのか自分が変わったのか・・・。おそらく後者だったのだろうとは思うが。

北方謙三が当時描いていた一連の作品は、大いなるマンネリズムの下に成り立っていた。登場人物や場所、シチュエーションは違えども、根底にあるテーマは皆同じ。だが、そのマンネリな中にも、一種独特の行間に潜む息遣いが好きで飽きさせなかった。それが、いつの頃からか、ルーティーンワーク的な作品の作りになってしまったと感じ読めなくなってしまったという部分もあったのだろう。

銃などが身近に存在しない、戦いと言う場が具体的にイメージしにくい日本という環境の中にあって、この頃は、物語のシチュエーションをどこに求めるかが日本の冒険小説、ハードボイルド小説のテーマであった。船戸与一は初めから海外へその活路を求め、森詠は近未来にその方法論を提示した。その中にあって、彼らとは違う世界観を持った、純文学的私小説のような北方の作品は、その行き場の無さに失速していったのだろう。そして、その活路を時代を遡る事によって見出したのは、必然だったと思う。

北方の時代小説は、遥か昔に初めて時代小説に手を染めた時のを読んだ気がするが、記憶に残っていない。「水滸伝」はいつかは読もうと思っていたテーマだったので、この機会に読んでみようと思う。全19巻という長丁場もまた良い。


余談だが、高校時代、授業中に北方の本を読んでいて、先生に取り上げられたことがあるが、「北方もここでそうやって授業を受けていたんだよな」と聞いて、同じ高校だったというのを知った記憶は遠いけれども、懐かしい記憶ではある。