明日なき二人 (Hayakawa novels)
ジェイムズ クラムリー
早川書房
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酔いどれの誇りのミロと友よ、戦いの果てにのシュグルー。それぞれのシリーズを代表する二人の競演。

10代の頃にクラムリーの一連の物語を読んだ時は、酔いどれのミロ・ミロドラゴビッチよりもベトナムあがりのC・W・シュグルーの方が好みだったんだが。年をくったせいか、ミロが良い。書き手のジェイムズ・クラムリー自身が60に近い時の作品だから、より年齢的にミロに近かったせいもあるのかもしれない。

アル中のブルドッグ、ファイアーボール・ロバーツが良いさらば甘き口づけは完全なるチャンドラーへのオマージュだったが、こいつはサム・ペキンパーそのものだね。センテンスの背景に見える乾いた風景。

この人の物語は、プロットなんてどうでもいいというか、とても希薄だけど、登場人物の語り口と彼らの持つ背景が物語へ収斂されていってプロットに肉付く感じ。ハードボイルド的くくりで語られがちだけれども、純度の高い文学。そしてその物語の運び方は、まるでサム・ペキンパーの映像を見ているよう。それと、ビート、或いはロード・ムービー。

内容は、自分の金をパクられたミロと命を狙われて誇りを無くしたシュグルーが、それぞれを取り戻すための物語だが、ストーリーを追っかけるのでは無く、彼らの物言いを一言残らず拾わないとこいつを味わうことはできないだろうな。