マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)

久々に SF でも…と思い、ジャケ買いならぬ表紙借り(図書館ねw)で手に取ったこれ…当たりだった。ウィリアム・ギブソン的サイバーパンクの匂いがプンプンして。

2000年代以降は、マトリックスや攻殻機動隊なんかの映像的サンプルが多数あるから、この手の物語りは想像的補完がしやすくて良い。なので、好きな人は面白いだろうなぁ。


「マルドゥック・スクランブル-09法」に基づき、全身に金属繊維による人工皮膚を移植され一命を取り留めた、主人公の少女娼婦”ルーン・バロット” それにより優れた体感覚とあらゆる電子機器を触れずに操作出来る能力を得、自らの存在意義を確認する為に、自分を殺そうとしたギャンブラーのシェルを追う。

そのバロットとパートナーシップを組む委任事件担当捜査官、どんな兵器にも変化できる金色のネズミ型万能兵器 “ウフコック・ペンティーノ”

かつてのウフコックのパートナーで、ウフコックに濫用の限りを尽くした、シェル側の委任事件担当捜査官 “ディムズデイル・ボイルド” 彼はかつてウフコックと同じ研究所に属し、人工的に擬似重力を発生させる能力と、睡眠をまったく必要としない体を得た人間兵器だった。

このディムズデイル・ボイルドが疑似重力を発生させ、壁を歩いたり天井を歩いたりする所や、その疑似重力を使い、64口径という巨大なリボルバーを操り、ルーン・バロットやウフコックと銃撃を行う描写は、まんまマトリクスや攻殻機動隊、GUNSLINGER GIRL、ブラック・ラグーン…そんな感じだった。要は非常に映像として想像しやすいんだよねぇ〜。

そして、ド派手なアクションとあり得ない科学技術と近未来的背景…なんていうのが好きな人にはまさにうってつけの本。

かと言って、プロットの破綻があるわけでもなく、自らの存在意義・有用性を証明する為に戦うというバックボーンを元に、人物描写の書き込みもよく行われ、それなりの奥行きを物語りに与えている為、上質なエンターテインメント作品となっている。

久々に何も考えずに楽しめる作品に出逢えて幸せなひと時だった(^ω^)