より大きな地図で 相模大野駅前複合再開発 を表示

たまには仕事の話でも(笑)

先日、相模大野駅西側地区第一種市街地再開発事業の事業者、野村不動産が商業施設をやるっていうんで説明会があったので、物見遊山で行ってきた。まちづくり三法の規制並びにリーマンショックの影響で、2008年以降、大型商業施設の新規開発自体が激減した中での大型開発案件ということもあって、まぁある程度の期待値があるかなぁということで。事業主体が野村不動産とジオアカマツっていうところに一抹の不安はあるが(笑)

概要は以下のとおりで、北棟・南棟あわせて商業床3万m2程度の大型商業施設が、小田急相模大野駅からペデストリアンデッキで直結という形で開発される。

開業予定時期:平成25年3月
構造・規模
【北棟】
・大型商業棟 RC 造(一部 S 造)地下 1 階地上 6 階建
・駐車場棟 S 造(一部 SRC 造)地下 1 階地上 11 階建
【南棟】
・分譲住宅 RC 造(一部 S 造) 地上 26 階建
・賃貸住宅 RC 造(一部 S 造) 地上 20 階建
延床面積
【北棟】 約 6.8 万㎡ 【南棟】 約 6.8 万㎡
主要用途
【北棟】大型商業(大型専門店)、区分店舗、駐車場、駐輪場
【南棟】区分店舗、公共公益施設、住宅
商業・サービス店舗面積
【北棟】
・大型商業店舗面積 約 20,890 ㎡
・区分店舗面積 約 3,050 ㎡
【南棟】
・区分店舗面積 約 9,060 ㎡
・公共公益施設面積 約 5,970 ㎡
駐車場・駐輪場
・市営駐車場 約 700 台
・市営駐輪場 約 3,000 台/商業駐輪場 約 1,000 台
・市営バイク置場 約 50 台


駅直結の大型商業なんで、あまり心配しなくてもそれなりに鉄板な物件になりそうだけれども…野村不動産の開発なんでおそらくSPC化される点と、区分所有…すなわち地権者区画がそれなりにあるのがちょっと気になるかな。


マーケットとしては、乗降数約12万人と、ターミナル駅を除いて小田急沿線の乗降客の中では上位クラスの駅となっているので、充実していることが伺える。それを反映して、伊勢丹相模原店や小田急ステーションスクエアなどの大型商業施設が駅前に立地しているマーケットとなっている。

がしかし、三越伊勢丹の決算資料を紐解いてみると、伊勢丹相模原店の売上高は2011年3月期で260億弱と規模感の割にはそこそこの売上で、しかも、減損を行なっている…と言うことは赤字の店舗と推測される。また、小田急ステーションスクエアの売上高は約140億で、こちらもそこそこの売上という感じ。

小田急ステーションスクエア自体は、1996年に小田急百貨店が入居して開業したが、2年あまりで撤退。その後、アウトレットモールへ転換させたが、それもうまく行かず、紆余曲折を経て今の駅ビル業態へ落ち着いている側面がある。

2館とも、決して絶好調というわけではない。

事業主体の野村不動産は、この開発に関して、12万の乗降客(肥沃なマーケット)と平均世帯収入の高さを売りにしているが…相模大野の乗降客は確かに小田急線沿線では上位だが、ターミナル駅で無い事を鑑みると、商業床が増えるからと言ってマーケットがそれに比例する程は広域に広がるわけではない。

現状は、伊勢丹とステーションスクエアの売上を併せて相模大野駅前のマーケットは400億規模。郊外型の6万m2規模の優良SC1館と同等レベル。駅前だけのミクロな視点で考えると、似たようなマーケットとして京王百貨店SCとOPAの2館を揃える京王聖蹟桜ヶ丘のマーケットがあるが、あちらも2館併せてほぼ400億~500億のマーケットで頭打ちと言う感じだし、相模大野に新規の商業施設ができたとして、丸々1施設分、マーケットが伸張することはまず無い。

更には相模大野は駅周辺の混雑状況と、町田という巨大マーケットが隣接しているため、商業施設が新設されたとしても、外からの顧客の流入はそれほど見込めないだろうから、あくまでも近隣型の商業施設となる。

…という事は、高い坪効率は見込めず、郊外型のSCや郊外駅ビル並みの坪効率に落ち着くはず。郊外マーケットの特徴で、夜の引きも早いしね。まったくデータ取ってないし、周辺環境の現調もしてないので、超適当な憶測でしか無いけど、相模大野マーケットはこの商業施設ができて100億程度マーケットが伸張するかどうかって言うのが、今のところの感想。

後は、どのぐらいの賃料条件幅をデベが考えてるかによって、良い案件なのか悪い案件なのかが決まってくるということになるから、そこにもう一つの不安がある(笑)

この開発案件、同じような開発を結構やられてる東急不動産さんの物件のように、物理的に施設内地権者区画を分けているわけではない(同一施設内で床が別れている)ので、運用面でそれなりの手間がかかるだろうし、どこまで当初のイメージを維持できるかわからない。地権者からのマスターリースをジオアカマツが請負い、テナントへサブリースというスキームが描かれているから、テナントとしてはやりやすい部分はあるけれども、果たしてジオアカマツにどの程度PM能力があるか皆目検討がつかない。ジオアカマツが絡んだ案件(トレッサ横浜しかり、津田沼モリシアしかり)で絶好調って言える案件を知らんというのもあるw

更にはSPC化が前提となっているのであれば、利回りを確定させた上での案件になると推測されるので、条件に関しての融通幅があまり無いのでは…なんてね。ま、これは実際交渉に入ってからわかることだろうけど。

最終的にどの程度の商業になるかと言えば…本厚木のミロードであったり、新百合ヶ丘の一連の商業であったり、聖蹟桜ヶ丘だったり、戸塚駅前の東急さんだったり、東戸塚駅のオーロラモールだったりって言うところなんじゃないかな。つまり良い立地ではあるけれど、新規大型案件が少ないから無理して取りに行くっていうのではなく、現実的な水準を考えた出店判断が妥当な案件という感じかな。

と、久々の仕事ネタでした。