商業店舗の賃貸借物件の話。

現在、私が行っているのは、居抜案件中心の店舗物件の探索である。
具体的に言うと、新築案件ではなく、すでに建物があり、商売を行っていた店舗が契約切れによる撤退など、様々な理由によって出て行ってしまい、空きとなってしまった店舗物件を、自分の業種にあった立地に基づき、仕入れ、調査することである。
どのように物件情報が入ってくるかと言うと、流通物件を取りまとめて仕入れを行い、店舗事業者へ物件紹介をする企業のルートや、店舗事業者(私の会社)と個別に繋がっている不動産屋やブローカーのルートからである。

通常、契約に至るまでは、オーナー(家主)→不動産業者(仲介)→テナント(店子)の3者間での契約形態となり、仲介を行う不動産業者は一社のみである。
ただ、このような形態で大量出店を行う場合、テナント側は、オーナー(家主)と直接繋がっている不動産業者(元付け)とのコネを多数持っていなければならず、100件調査して自分の業種に見合った立地や賃料条件が1件あるか無いかというような中では、オーナー(家主)と直接繋がっている不動産業者(元付け)のみを伝手として大量出店をすることはなかなか難しい。
そこで、直接仕入れの案件(家主と直接繋がっている元付けからの)だけではなく、流通している物件を探して紹介しているブローカールートも併用して店舗案件を仕入れることになる。

不動産業者の報酬(賃貸借物件の場合)は宅建業法によりあらかじめ限度額が規定されており、それは、借賃の一ヶ月が限度となっている。
つまり、家主と店子(テナント)を仲介して得られる報酬額は、仲介のところに複数不動産業者が入ろうとも一ヶ月の借賃が限度というこである。

オーナーから直接仕入れを行っている物件については、不動産業者は丸々一ヶ月分の報酬額を得ることができるが、間接的に仕入れた流通物件に関しては、報酬である仲介手数料一ヶ月分は、オーナーと直接つながっている元付けの業者に権利があり(全てそうではないが)、店子へ紹介してきた不動産業者に入ることはほとんどない。

ではどうやって彼らは利益を得ているのか。
それが企画料であり、たいていは借賃の一ヶ月となっている。


先般、私が仕入れた物件がこの企画料付物件であった。
その物件は、ナショナルチェーンの物販店を全国展開しているA社の案件で、A社が地主と直接契約をし、建物を建てて15年契約を行っており、諸般の事情により、A社は15年を待たずに2年間の残期間を残して撤退し、私のところは地主との直接契約ではなく、A社と賃貸借契約を結ぶことになった。

この案件を持ってきたところは、いわゆる商業店舗の仕入れを専門に行っている会社で、直接A社より仕入れていたのだが(後でわかったのだが)、企画料付物件となっていた。
当初、私はそのことに関して疑問に思ったが、おそらく他に元付けの業者がいるのだろうと思い、企画料に関しては言及しなかった。
なぜ言及しなかったかと言うと、交渉に入る最初の段階で、企画料を払うつもりは無いなどと言うと、他へ情報を持って行かれてしまい、その物件を手に入れることができなくなってしまうからである。

この企画料自体は、法的には何の根拠も無く、払わなくても問題ないのであるが、商業店舗の場合、そんなことをやっていたら出店するための案件情報なんぞ入ってこなくなってしまうし、出店したい物件を契約することもできなくなってしまう。
よって、企画料に関しては、値交渉に限って契約成立寸前で行うのが鉄則である。
(仲介業者との信頼関係によって先に金額を決めてしまうというのも一つの方法だが、一見の仲介業者の場合、仲介業務に身が入らなくなるのでお勧めしない。)

で、今回はどうしたのかというと、A社との契約合意に至った段階で、一方的に仲介業者の業務に対する査定を行い、企画料に関しては半額にて決着をつけさせてもらった。

本来、A社から直接仕入れを行っているので、仲介業者自身は企画料の設定をしなくとも仲介手数料の一ヶ月分が丸々手元に入ってくるのだが、仲介業者内での案件担当の違いにより(つまり私のところを担当している人間が、別のところの担当をしている人間より案件を融通してもらったということらしい)、企画料の設定が必要であったようだ。

こういう理由なら払わなくても良かったが、A社からの賃貸借期間が終了する2年後に、オーナーと改めて直接契約を行う必要があり、その時に家賃の値下げ交渉を含め、仲介業者に契約交渉を行ってもらう含みで半額にした次第である。