魔法なんか無い。
先日、私に仕事のイロハを叩き込んでくれた方と飲む機会があった。その席上でその方が言っていたのは、「ビジネスに魔法なんか無いよ」ということであった。
「魔法なんか無い」
確かに、そのとおりだった。私自身も店舗を開発するという業務を通じて学んできた事は、「魔法なんか無い」ということだった。
店舗を出店する場所を開発するという事は、突然いい場所が振って沸いてくるものではない。それなりにリサーチをし、情報元との関係を築き、情報ルートを構築し、100ある中のせいぜい一つがものになるかならないかというぐらいのコストと時間がかかるものである。そういった仕込みをしていく中で、突然、あり得ないような良い情報というものを得ることがきるのである。
そんな当たり前なことを忘れてしまっていた。
すべての物事にはそうなるべくしてなるというプロセスがあると思う。ライブドアの事件もまた、ありもしない魔法だけを信じた結果、生じた必然だったのだろう。
魔法を魔法で無くすためにはプロセスが重要である。結果は結果として突然やってくるものではなく、プロセスを経ることによって生じるものなのだから。
5年間利益をあげたことの無い事業で、どうやって来年に店頭公開まで持っていくというのだろう。本業に変わるビジネスを手に入れることができたといっても、それはあくまでも現段階では他人の事業にすぎず、そこから生み出されるキャッシュフローもたかが知れており…否、その事業が果たして本当にキャッシュフローを生み出せるのか、実際に検証もされていない。目の付け所の良さだけで、ビジネスが成り立つと思っている気がしれない。
アイデアがあって、それを実行に移し、トライ・アンド・エラーを繰り返し、仕組みを構築していく先に未来が開けるのが自明の理ではないか。そしてそこには、それなりのコストと時間がかかるものである。
目先の派手さ、自分自身が外からどう見られたいか、に囚われ、人を育てず、内に目を向けず過ごしてきたツケが、増資の繰り返しによる資本の増強と、それに見合うだけの売上をあげる必要に迫られるという形で現在回ってきている。資本に見合う売上が上がらなければ、外からの資金供給はストップし、資金供給で成り立っていた組織は早晩立ち行かなくなるであろう。
本業のビジネスモデル構築が利益を生み出す形でなされていないにも関わらず、そのモデルを売っていくことによって利益を上げていこうとする矛盾。本業以外の、まだ手をつけていない利益を上げられるかどうかわからない新たなビジネスモデル、しかもそのモデルを机上で見ただけで利益を上げていこうとする矛盾。本業を何とかしようと言いつつも、現在本業を動かしているリソースに、本業外の負荷をかけようとする矛盾。
魔法でも使うつもりなのだろうか…。