クライム・ウェイヴ (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
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Noir … 虚無的・悲観的・退廃的な指向性

James Ellroy = “Demon Dog of American crime fiction.”

10歳の時に母親を何者かに殺害され、犯人は現在も不明。17歳の時に父親を亡くして以降、18歳からストリートを住処にし、ドラッグ、押入り、下着盗…犯罪に手を染め刑務所に送られる。出所後、アル中に端を発する死の淵から蘇り、30歳で最初の小説を書き上げる。# Brown’s Requiem

根底にあるのは恐怖。根底にあるのは孤独。根底にあるのは母親の殺害。母親の秘密を暴き殺害をなぞる事が母親への回帰。自身への回帰。# わが母なる暗黒

ブラック・ダリアビッグ・ノーウェアLAコンフィデンシャルホワイト・ジャズ

暗黒の L.A. 4部作、母親が殺害された時代と場所。腰のところで真っ二つに切断され、口は両端が耳まで切り裂かれ、身体中に残酷な仕打ちが加えられ、血抜きされ洗浄された死体=ブラック・ダリア。ブラック・ダリアは母親ジーン・エルロイであり、母親ジーン・エルロイはブラック・ダリア。

ノワールで最高に良く、犯罪小説・暗黒小説の書き手としての印象を不動のものにしているけど、ジャズのスイングのような散文と複雑に絡み合うプロットをロジックで解析するから面白いと言うよりは、内に飼っている恐怖が共鳴するから面白いんだろうな。

サミー・デイヴィス・Jrを相棒に、LSDで錯乱するシナトラを道連れに、メキシコを暴虐の渦と化すスキャンダル記者の悪行を史上最高に狂った極悪狂騒文体で描く中篇をはじめ小説3本、異常犯罪の深層に迫るルポ、LAをめぐる叙情的なエッセイまでを収録。狂犬エルロイのCRAAAZYな才能の全てがここに。