蚊トンボ白鬚の冒険 / 藤原伊織
ひょんな事から奇妙な能力を持った蚊トンボ白鬚(シラヒゲ)に頭の中へ侵入された若い水道職人・達夫の冒険活劇…なんて言ったら、ファンタジー・ハードボイルドっぽいノリになるんだけど、読み手の感情移入をあざ笑うがごとき虚無感、感情移入と言う言葉がある意味ナンセンスな人物造詣、蚊トンボ白髭と主人公・達夫のやりとりがユーモラスを感じて良いはずにも関わらず全く明るさを感じさせない物語のトーン、そして、それらの中にもある種の優しさが垣間見える筆致はまごうかたなき藤原伊織節の物語である。
この大いなるマンネリズムが作品を排出していくことによってどう変化して行くかがある意味楽しみだったんだけどな…と。