ファストファッション
恒例の日経 MJ ヒット商品番付2009年上半期分が出たわけだが、西の横綱の ” ファストファッション ” って何か違くね?商品じゃねぇだろw っていうのはおいといて…何を今更ファストファッションって思うのがたぶん、業界関係者の大半だろう。
ファストファッションって、最先端のトレンドをいち早く取り入れ、それをファーストフードの様に早く安く提供する業態のことで、国産であれば、以前からワールドさんやポイントさんなんかが、コレクション発では無いけれども店頭起点型で今売れる鮮度の高い物をジャストインタイムで提供し成果をあげており、イコール、ファストファッション企業大手であるし、最近の取り組み方から言えば、広義な意味ではユニクロさんもファストファッション業態である。
まぁ、この番付の ” ファストファッション ” が指しているのは、H&M や Forever21 などの所謂外資ブランド勢である…ということで、H&M やForever21 が上陸して初めてファストファションという概念が一般レベルまで浸透したという結果の番付ということ。であれば、考えようによっては、いかにドメスティックのファストファションがブランド(知っているとかそう言う事でなく)として認知されていなかったか、ということに繋がってしまうという結論が導かれてしまうのでちょっと悲しい。
そもそも、店頭起点による鮮度の高い MD 自体のビジネス的有効性は良くわかるが、突き詰めて行けば、売れ筋の商品だけが店頭に並んでいると言う事になり、そうなると国内においてはブランドもヘチマも無くなるのが自明の理で、ブランドを買っているという意識はユーザーにはなかなか育たないし、早晩つまらない物になりさがるのは致し方ない限りだろう。
ファストファッションという業態自体がブランド背景やレジェンドというような部分とは別の次元で勝負しているビジネスモデルとは言え、From LA や From SWEDEN などのフィルターを通した段階で、しっかりブランドイメージが確立されてしまうのが日本のマーケットなので、ドメスティク企業群が同じ仕組みで戦ったとしても、上記のような店頭起点型だとカタルシス(ブランドが体現する何か)をカスタマーへ提供しにくい分、分が悪い。
その辺の事は素人に毛が生えた程度の私が言い出さなくても、大手アパレル企業さんは分かってるようで、色んな試みを表立ったり、或は水面下でやっている…んだと思う(笑)
どことは言わないが、ファストファッション化しさえすれば良いと思ってる大手企業も若干あるようだが、そんなもんは一朝一夕にオペレーションできるわけないし、上辺だけでまず間違いなく失敗する。それよりも、ファストファッションであろうが無かろうが、今国内のアパレルがやるべき事は一つ、しっかりとした背景を持ったブランドイメージの確立が急務で、トップグループを走ってる企業は、成功不成功はともかく、案外その試みを早々に始めていたりする。
2年くらい前だかに浦和パルコで見たコモン・ミーツ・アンコモン。メンズをしっかり作ってて、いわゆるおっさんのの私なんかにもささる良い MD だった。
ファイブ・フォックスからのスピンアウト組がポイントさんの出資を受けて立ち上げたビジネスだが、この間、久しぶりに某所で見たら、いつの間にやらレディースブランドになっており、しかもポイントさんが得意とする所のナチュラル系に MD が変わっていて、背景を感じさせる何かと言うものが皆無となっていたので非常に残念だった。売れなくて厳しかったんだろうなぁとは思うが、もう少し我慢して欲しかったなぁ…個人的に。
純国産ではないけど、ワールドさんが、ライセンスを受けて(たぶんw)国内に導入したオーストラリアの伝統あるアウトドア・カジュアル・ブランド、DRIZA-BONE。これまた、背景がしっかりしててメンズの良い匂いがして、個人的に好きだったけど、売れなかったんだろうね。いつの間にやらやめちゃってて非常に残念。
どちらも2006年という、SC 好景気・好循環のピークからスタートしたビジネスだったので、景況感が変わっていれば違う動きも見えたんだろうけど…結果論として、どっちも郊外 SC にとっては店舗開発目線で見ると高単価すぎ…だったかな?
まぁ当時、単価1万超のアパレルでも普通に売れてる状況だったから、ビジネス的に早く結果を出すことが義務づけられたこれらのブランドが、郊外モールという場を主戦場として選択した戦略は当然と言えば当然だから致し方なしだけれども…。
成った瞬間から陳腐化は始まる物なので、早晩、ファストファッションが落ちて行く事は必定だから、ここで種を巻いておく事が今後の飛躍をとげる重要な起点となるのが今の状況。
で、トランスコンチネンツ。そういう視点で見ると、なぜポイントさんが買ったのかがうっすらと見えてくる気がする。
現存する国内ユニセックスブランドの中で、唯一と言っていいほどの伝説を持っており、その背景の奥行きを感じさせる純国産ブランド。
直近、限定のスーツ出すって言うんで、さくっと冷やかしに行ってきたが、良いスーツだった。超軽くて着やすくコンサバで。
基本、ファッションに関しては専門家じゃないので、表面上の上澄み部分で物を語るが、上記の限定スーツが2万円弱、ロゴ入りポロシャツが2000円弱、大ヒットした trekking rucksack の復刻版が6000円弱…という価格帯で展開されており、飛行機マークという強烈なアイコンを生かしながら、ポイントさんの生産背景を上手に使って、買いやすい価格レンジを構成するスキームが出来上がりつつあるように感じる。
ビジネス的にだいぶこなれてきたようだったので、今後が非常に楽しみになってきた(笑)。要注目です、はい。