ハメット、チャンドラー、ロスマク…その正統なる系譜を矢作俊彦が紡ぐ一連のハードボイルド的なる作品群には強く感じる。

群れない、馴れ合わない、自分のルールで動く…血が飛び散り、爆煙が舞い、理不尽にも簡単に殺される殺伐で派手な描写にも関わらず、一貫して乾いて静謐なる透明な空気感が漂うのが矢作俊彦の小説…かな。それは、スタイリッシュな作風と言われているが、77年に刊行された処女長編作「マイク・ハマーへ伝言」の時からその基本は変わらないねー。


って何だよ…当時からもう34年じゃん…歳取る筈だなぁ (笑)

高級外車窃盗団を追う築地署の刑事・游二の前に、その女は立ちふさがった。ティファニーのショウウインドーに30カービン弾をぶちこみ、消えた女。無垢な少女の微笑と、妖艶な獣の哄笑を残して…。魔に取り憑かれたかのように、彼は女を追い始める。そして次々に起こる凄惨な殺しと爆破事件。謎が謎を呼び、事態は一気に緊迫の局面へ。


ソ連赤軍に正式採用された特殊部隊用のサブウェポン、アブトマティチスキー・ビストレート・スチェッキン…軽装備で任務を遂行する特殊部隊にうってつけの、装弾数が多くて銃器が小さいストック付きの拳銃。フルオート可能な銃器だが、20発そこらの装弾数でフルオートでばらまける訳も無く、点射が現実的な銃でしかもバースト射撃をサポートする機構など付いていないにも関わらず、指先一つで完璧にコントロールする女…なんつうのが全編通して話のキーになるんだから、このぶっ飛んだキャラを想像しただけてもうね…

謎解きに主眼がある訳でもなく、人間模様に主眼がある訳でもなく…読み手を選ぶけれど、こういうノリが好きな人には溜まらないだろうねぇ。

ちなみにこのスチェッキンは、ブラック・ラグーンのフライフェイス・バラライカが使用してる銃でもある (笑)

ちょっと前に読んだ司城志朗との共作が今イチだったので、尚更このENGINEの出来はウチにとっては久々のヒット。今年読んだ本の中で今の所かなりの上位に入るなぁ…と言う事でかなりのお勧めです、ハイ。