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生誕祭 / 馳 星周

生誕祭〈上〉感情移入が物語を読む動機であるなら、およそ感情移入なんか欠片もできない人間が出てくる馳星周が紡ぐ一連の物語り群は読むに値しない…はずである。

なら、なぜ読む?(笑)

物語を読む読み手の成熟=登場人物に対する感情移入という呪縛からの開放、物語の本質を手に入れることができるように読み手が成長した、或いは、絶対的に当事者になり得ないが故の通俗的な覗き見趣味的カタルシス?

金の為にオヤジのアレをしゃぶる麻美の行為に倒錯し、何の苦労もしたことのない金持ちのお嬢、早紀に対する麻美の憎悪に共感し、麻美とともに早紀の破滅を望み、優しさが弱さ以外の何物でもない世界にフィットできない彰洋の恐怖をあざ笑い…結局のところ、好むと好まざるとに限らず、己の後ろ暗い魂そのものを物語の中の行為に見出すからこそ、惹かれるんだろうなぁ。

でだ。

馳星周の紡ぐ物語は麻薬みたいなもんで、トリップしてる間は気持ち良いが、抜けた後のバッド感がなんとも…っていう感じなんだけどこの物語はらしくなく読後感の抜けが良く久しぶりの当たりだった。(笑)


烙印の森 / 大沢在昌

烙印の森烙印の森 / 大沢在昌

ふむ。アンドリュー・ヴァクスだね、これ。佳作。

ハイテク機械の改造マニア「福耳」=マッドサイエンティスト「モグラ」
ニューハーフのボディガード「シェリル」=男娼「ミッシェル」
BAR「POT」=ママウォンの中華料理店「性交園」
犯罪現場を専門に撮り続けるカメラマン「メジロー」
片腕の元傭兵「マーク」
静謐なるキリングマシン「フクロウ」
フクロウを狙うマリーンの教官「L.T」

出てくるのはプロ。アウトローでは無く、アウトサイダー。

“アウトサイダーっていうのは、やくざじゃない。プロだ。犯罪かもしれん仕事を、本業としてやり、しかも組織にはいっさい属していないような人間たちだ。自分以外にはいっさい心を許さず、過去も未来もない。しかもアトウロウとアウトサイダーのちがいは、仲間がいないってことだけじゃない。法律を犯しつづければ、アウトロウには誰でもなれるが、アウトサイダーには、それだけじゃない、別の理由が必要だ。”

 
最近、忙しくて本を読むモードに無かった。このぐらいだったらさくっと読めていいね。

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虚の王 / 馳 星周

虚(うつろ)の王最も影響を受けた作家がジェイムズ・エルロイで、エルロイが爆発していて危険な小説「ホワイ・トジャズ」がバイブル。

虚の王 / 馳 星周 ノワール…国内ならやはり馳星周だな。

新装版 氷の森これ読んで、思い出したのが 氷の森 / 大沢在昌

かなり乱暴な言い方をしてしまえば、どっちも同じ内容の小説なんだが、方や渋谷系で方や六本木系。どっちも甲乙つけがたい。

新宿がテリトリーの馳星周が紡ぐ香りはジャックダニエルあるいはワイルドターキーで、六本木がテリトリーの大沢在昌が紡ぐ香りはゴードンのジンあるいは寒梅かな。


無頼の掟 / ジェイムズ・カルロス・ブレイク

無頼の掟無頼の掟 / ジェイムズ・カルロス・ブレイク

2006年このミス海外編4位だし、ノワールだし、かなり期待値高かったんだけどな…うーん…。


プロット悪くないし、ストーリーも悪くないし、登場人物の造詣も悪くない。そう、悪くないんだけど…俺的に決め手にかける。

ペキンパーワイルド・バンチガルシアの首ウォーレン・オーツゲッタウェイテルマ&ルイーズ、エトセトラ、エトセトラ。

いわゆる破滅型ロードムービー的キーワードが何の衒いも無くちりばめられていて、その手の物が好物だった俺としては、間違いないアイテムだと思ったんだがなぁ。どうもノレなくて途中斜め読み。

や、ほんと、悪くないし質も高いし、作家としては一級品だと思う。このまますぐ映画が撮れそうなぐらいの完成度だから、逆に俺的に面白くないのかなー。想像力があまりかきたてられないっつうことで。


明日なき二人 (Bordersnakes) / JAMES CRUMLEY

明日なき二人酔いどれの誇りのミロと友よ、戦いの果てにのシュグルー。それぞれのシリーズを代表する二人の競演。

10代の頃にクラムリーの一連の物語を読んだ時は、酔いどれのミロ・ミロドラゴビッチよりもベトナムあがりのC・W・シュグルーの方が好みだったんだが。年をくったせいか、ミロが良い。書き手のジェイムズ・クラムリー自身が60に近い時の作品だから、より年齢的にミロに近かったせいもあるのかもしれない。

アル中のブルドッグ、ファイアーボール・ロバーツが良いさらば甘き口づけは完全なるチャンドラーへのオマージュだったが、こいつはサム・ペキンパーそのものだね。センテンスの背景に見える乾いた風景。

この人の物語は、プロットなんてどうでもいいというか、とても希薄だけど、登場人物の語り口と彼らの持つ背景が物語へ収斂されていってプロットに肉付く感じ。ハードボイルド的くくりで語られがちだけれども、純度の高い文学。そしてその物語の運び方は、まるでサム・ペキンパーの映像を見ているよう。それと、ビート、或いはロード・ムービー。

内容は、自分の金をパクられたミロと命を狙われて誇りを無くしたシュグルーが、それぞれを取り戻すための物語だが、ストーリーを追っかけるのでは無く、彼らの物言いを一言残らず拾わないとこいつを味わうことはできないだろうな。


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